映画 / 黒沢清「CURE」(1997)【感想】

CURE キュア [DVD]

 
「1997年公開、黒沢清監督「CURE」という映画を見たの。
 だって素晴らしすぎる予告編だったんだもん!絶対にツボだって、こんなん!」
 

「予告で期待した通り、美術セットが素晴らしい映画だった。

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 一場面一場面が、美しい絵画のようで、惚れ惚れするレベル。
 光や写す角度、全部に意図があるんだろうと、素人目にも分かる拘り。
 フルショットが多用されるカメラワークも、そういった絵画っぽさに拍車をかけてるね」

「 ストーリーに関しては?」
「殺人に関する才能、その伝搬・継承……ってな感じの、サイコ・スリラーもの。
 割と定番で、美術セットほど目新しいものはなかったかな。
 でも、考えようと思えば、いくらでも考えられるように作ってある映画だと思う。
 作中で提示される多くのモチーフ、暗示、象徴、妄想、偶像、現実……
 見た人の数だけ、あの場面、あの結末には違う解釈があるっていうタイプの」
 
「という訳で、以下、一応自分なりの解釈・答えみたいなものを出しておこう。
 なんか、そうしておかないとスッキリしないし」
 

 

タイトルCUREについて
 
cureという英単語には癒やしだとか治療だとか意味が複数あるけど、
今作に関しては「救済」と「牧師の務め」この2つがメインだと、私は思ってる。
 
主人公にとっての救済は何だろう。
そう考えた時に真っ先に浮かぶのは、1:08:41から始まる、妻の首吊り死体。
フルショットによる長回しが多用されている今作で、このシーンだけがバストショットを20秒近く使っている。
 

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精神疾患を抱える妻の死は、主人公にとって絶望と同時の解放でもあったはず。
妻の死体こそが彼にとって、提示された救済。
 
牧師の務めについては、そう思う要素が2つ。
まず、主人公の相棒兼精神科医兼被害者でもある佐久間は、間宮のことを『伝道師』と言ったよね。
各地を回って、教えを布教していく伝道師そのままの意味だろうけど、
調べてみたら、下位教職位、牧師になる前の位を指すこともあるそうで。
牧師見習いっていう意味合いの。
 
ラストシーンで主人公は、間宮よりも何気ない仕草でウェイターを暗示にかけている。
CUREの能力がパワーアップしてるんだよね。
それに主人公は、『ああ、分かった。所轄署の方へ車を回しておいてくれ』って言うんだけど、ちゃんと刑事を続けている。
居るべき場所がある
そこが、教会に属して、人々の魂を救済(=信仰)へと導く牧師っぽいと思うんだ。
記憶喪失でふらふらしてた間宮(伝道師)とは明らかに違うよね。
 
 
・Xについて
 
映画内の重要な要素でもある「X」
私はこれを、御神体だと思ってる。信仰対象とでも言うのかな?
キリスト教における十字架みたいなもの。
間宮にとっては猿のミイラで、主人公にとっては精神病棟に捨て去った妻。
各自の救済に関係のある対象物。
(猿のミイラは個人的にめちゃくちゃ怖いのでNG。
妻が猿と同じXの形にくくりつけられているのは、予告編45秒で見えます。
このカットも怖いんだよな)

 
伯楽の病院について
 
視聴中は、あそこ何?異世界?って思ってたんですけど、チャプター名を見るに、ハズレでもなさそう。
 

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(チャプター16から:ミノス王の宮殿
ミノス王の宮殿=ギリシアクレタ島にあるクノッソス宮殿
この宮殿は、死者を祀るための、霊廟だという説が出ているらしく。(引用)
 

 
霊廟に辿り着いた人間は、主人公と間宮と佐久間。わお、全員狂っちゃったよぉ。
あの廃病院に辿り着けた時点で、後戻り出来ないほど常識から踏み外してるんだろうね。
 
 
間宮が着ていたトレンチコート
 

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(関係ないけど、この間宮演じる萩原聖人が、
 福本伸行作品のアニメ、カイジとアカギの声優と知ってドびっくりしている)

廃病院で間宮は、主人公とほぼ同じトレンチコートを着て登場する。
これは、あのクリーニング店から失くなっていた、主人公のコートでは?
同じ服を着ることは、同一になることであり、継承の準備が整った証
 
 
 「うん、これぐらい。謎はまだまだあるけど、全部読み解くのは無理だ。
 理解は出来ないけど観てて面白いっていう類の映像ではあったし、
 なんか3年後ぐらいにまた観返してるような気がする。
 そういう引力が、この映画にはある。」
「カルト映画ってこと?」
「あ、はい。そうです」